轍(わだち)私の教育論 深い学習を促す共感的な形成的評価と相手意識

 子どもたちに深い学習を促すための評価は大切です。通常、到達目標に照らし合わせて評価をしますが、その評価が教師だけのものとして止まり、評価が子どもにすべてフィードバックされているかと言えばそうとも限りません。指導と評価の一体化がよくいわれますが、子どもに学習内容が定着されていないと何のための評価か意味をなさないものとなります。
 授業における教師の評価は大きくわけて、授業全体の成果を評価する総括的評価と授業過程における形成的評価に分けられます。本時のねらい、到達目標による評価も大切にしていますが、本校では、形成的評価を重んじています。しかも、一歩進めて、子どもと教師の相互理解・共感によることを評価として捉えてます。それは、学習を深い学習へと強化するものとして、共感による指導と評価の一体として、形成的評価の一つと捉えています。子どもと教師が授業中に「あーそうそう。」「よくみつけたね。」「よく頑張ったね。」等教師の情意的な気持ちを込めての賞賛を込めての評価がこれに当たります。教師に認められ誉められることによって子どもの学習は情意的により深い学習となります。学習内容を媒介として子どもと教師の情意的な相互作用が極めて大切な評価だとしています。 

 小規模校に限らずどの規模の学校においても、相手意識をもっての表現力を育てるためには、いつも相手意識を子どもに育てていくことを教師側が意識しておかなくてはなりません。この意味においても、授業中、教師と子どもとの共感による相互作用は大切です。もちろん、子どもに表現をさせる場を多く設定することは大切です。しかしながら、いつもいつも多くの人がいない現状においては、教師が子どもと共感をしながら、学習内容をより深いものとして確かなものとして、コミュニケーション能力を高めていくことが基本となります。
 子どもと教師が共有した体験・経験を授業に導入することに重視することで、授業は活性化したものになってきます。教師と子どもの共有体験には、子どもがどのような情意的体験をしたのかを教師は理解・推測し得るので、教材のねらいと子どもの体験を結びつけることが可能になってきます。そして、知性と感性をも取り入れた授業展開が可能となってきます。授業を生き生きとしたものにするために、教師は子どものレディネスを捉えると同時に子どもと共感するために、教材に関する種まきをしながら共有の体験を増やしていくことが大切です。教師の立場から学習内容を習得させていく指導法と子どもの情意的な反応に気づき、共感し応答して教材を提示していく指導法の両者を使い分けて指導力の向上を高めていくことが大切です。
 教師と子どもとの共有の体験のもとでの。子どもの情意的な反応を上手に取り入れた事例を具体的に説明しましょう。図工での版画の授業例です。版画の授業では、何をテーマにして彫るかは先生も子どもにとって大きな課題です。1ヶ月前に子どもたちと受け持ちの先生は、ふるさと学習で栽培漁業センターに生きました。そこで、ヒラメの餌やり体験やアサリの稚貝やキジハタのえらカットを体験して、自然界における命の営みに情意的な感動体験を先生も子どももしました。共有の感動を版画で表現する授業は、教師からの指導はもとより、子どもとの共有の体験をもとにして進められました。子どもの体験を理解している教師の出す指示・助言は、子ども側からすれば子ども自らが体験したことを表現することであり、やらされる授業とは全く異なった形で展開されました。特に、下絵段階では構図がが子どもの思いや願いを表出したものとなって作品作りに励んでいきました。一番感動したところを思いっきり表現し、彫る段階、印刷段階では、彫刻刀を巧みに使い、インクもムラなく丁寧に仕上げました。このように、教師と子どもが共有の情意的体験をしていると子どもたちは、生き生きとした活動をします。
共有の情意的体験は、教師対個人のみならず、小集団、学級集団にもあてはまります。
初等教育においては、教師の人間愛を基盤とした教育理念、教材解釈力と同様に子どもと共感できる感性は、大きな資質です。共感できる感性は、子どもが可愛いと思える体験や子どもとの共有の体験を幾つも幾つも積み重ねることで自然と磨かれてきます。

Posted by kudamatsu_tt