~ 轍(わだち) ~
河津先生の教育論
1.合流教育
エピソード
1.先生との出会い
2.サル社会と人間社会
3.下宿でたたき起こされた
4.父の話~命・人間愛を考える~
私の教育論
1.知性と感性のバランスのとれた子
2.教師の独自性による教材の噛み砕きとしかけ
3.深い学習を促す共感的な形成的評価と相手意識
轍(わだち)とは、自然の野の道に車が通った後に出来る両輪の跡です。今の日本では轍を見かけることがほとんどなくなってきました。どこにいっても道路はアスファルトで舗装されています。情報化社会の到来に伴い、膨大な情報量のもと浮き草のように根が地につかないがごとく、物が溢れる社会で過ごしている私達。生きている実感の欠如が蔓延し始め、しかも閉塞感の強い日本社会になってきました。このような時代に生きて、自然の野の道に刻み込まれる轍は、人生に例えて、生命そのものであると考えています。生命が燃焼した時に発揮される個性・独自性、その個性・独自性を軸とした活動は、人格の底深くに生命の燃焼と共に轍を刻み込みます。そして、その人の人間性の一部として深く息づきます。The Teachers~轍では、私が若かった頃の体験から今日までの轍を紹介いたします。そして、The Teachersの教育基本モデルとなっている人間愛がどのように導かれてきたかを、恩師との関わりを中心とした教育論文・エピソード・教育雑感等で紹介もしたいと思います。
私がまだ学生だった頃、山口大学の心理学研究室のゼミの指導教官であった故河津雄介先生との出会いが決定的に私の人生に影響を与えました。先生は、社会心理学・学習心理学の実験心理学をご専門に研究をされておられましたが、毎年送り出される研究室の卒業生との交流を通し教育現場の悩みを聞くにつれ、教育心理学・教育学方面に研究領域を変えていかれました。先生と私の出会いがあった頃、先生は合流教育を研究されておられました。40年前の当時の私は、合流教育の特徴の一つである感情技法に非常に興味を覚えました。今でこそ、人間関係づくり等諸技法・ゲーム等は、ワークショップ形式で行われていますが、もともとは、アメリカ西海岸・カナダがはしりです。合流教育の感情技法のベースとなったのは、フィリッツ・パールスが開発したゲシュタルトセラピィーです。感情技法は、当時、大変珍しく、おそらく日本で最初に感情技法のワークショップが行われたのは山口大学だと思われます。その後、学者さんによって多様な演習の紹介・開発が行われ、いろいろな言われ方で日本中で実践され、体験学習をベースとした演習が今ではポピュラーになってきました。山口県では、アッフイーとして人間関係づくりの技法として定着しています。40年前、私は、先生のお考えと共に合流教育の感情技法、情意的側面・感性を大切にする教育に夢中になり、教育の世界へと誘われていきました。
先生は、その後、合流教育からシュタイナー教育へ、そして合流教育・シュタイナー教育から学んだことを基に心理学・人間の本質を駆使した百芳教育を展開され、オリジナルな教員資質向上のための教育方法を開発されました。百芳教育としての先生の理念は、今、教育関係者に突きつけられている教職員の意識改革、資質向上、指導方法の工夫・改善等、大いに参考になると思われます。先生の多数の著書も出版されていますので紹介をしておきます。インターネット検索で「河津雄介」と入力して頂ければ見つけることができます。百芳教育は、派手さありませんがオリジナリティーに富んでおり人生を肯定的で前向きに生きる人間の本質をついています。教育者として教育理念の深化や教育関係者のみならず一人の人間として豊かな人生を歩んでいくための理念を深めることも出来ると思われます。
「豊かな心を育てる感性開発ゲーム」(明治図書)
「よみがえった授業」(学事出版)
「合流教育ーその考え方と実践」(学事出版)
「シュタイナー学校の教師教育」(学事出版)
「教師性の創造ーシュタイナー教育と合流教育にもとづくいきいき授業学」(学事出版)
「教師の生き方革命ー人間として深く生きる自己開発法」(明治図書)
「授業を生き生きとしたものにする教師の力量を高める」(本の森出版)他
が出版されています。興味をもたれる方は、一読することをお薦めいたします。
先生の教え子であった私は、決して優秀な学生ではありませんでした。ギターを片手にコードだけの下手な曲を作り、ゼミでは屁理屈ばかり言い勉強をしない学生に映っていたと思われます。そんな私でしたが、教育の世界へと導いて頂きました。学生時代は、先生の元で、人生の中で一番専門書物に親しみよく勉強をした時期でもありました。
その後、私が教員になり、名古屋の短期大学で教授をされていた先生のお宅に泊まりがけで尋ねていったことがありました。お宅では、音楽とは全く無縁であった先生がバイオリンを弾かれ「えっ、河津先生が!」と驚いた思い出があります。曲名は忘れましたが、今までは、音楽のことなど言われなかった先生が、音楽に携わっている場面を初めてみました。ちょうど、ドイツから帰国されてからのことだったと記憶しています。シュタイナー教育は、芸術教育なのでドイツでバイオリンを学ばれたと思いました。そして、先生といろいろとお話をする中で
「宮村君は、これからも続けて音楽を通して教育を見ていくんだね。」
と私の人生の指針を小声で話されました。その言葉は、今でも強烈に心の奥底に轍として息づいています。私は、その通りに教員人生を歩いてきたように思います。その足跡は、The Teachersの作曲集で紹介をしている通りです。
何よりも先生の一番素晴らしいところは、多くの業績もさることながら、計りきれない人間に対しての深い愛情(人間愛)だと教え子の一人である私は思ってます。The Teachersの基本理念となった人間愛は、先生の教育論・後ろ姿、生き方から学んだものでもあります。
轍では先生の理念をベースとしながら、これからの時代を生きていく心ある皆さんに少しでもお役に立てばと思います。轍を作曲集・体験ことば集同様WEBページに随時更新していきます。具体的には、先生が歩んでこられた教育論、先生、私の人生体験から学んだ人間愛のエピソード、 The Teachersとして私見を入れての私の教育論・教育体験・教育雑感を紹介いたします。
私の力量不足で先生のお考えは、数%しかお伝えすることが出来ないかと思います。その点はお許しください。WEBアップ時は、教育論・エピソードが多くなると思いますが、私独自の教育論・教育体験・教育雑感も体験ことば集とは違った角度で精力的に紹介したいと考えています。教育論文調の堅い文章が出てきたり、逆に砕けた文章が出てきたり、構造化・体系化されていないと思われることがあるかもしれませんが、読者の皆さんが生きていく際の一助になれば嬉しく思います。